資産運用を始めようと思い立ったとき、最初の壁は「何から学べばいいのか」でした。
初心者向けの投資本を何冊か読み漁りました。読めば読むほど「知らないといけないこと」が増えていく気がして、いつまでも始められない。そんな状態が半年以上続きました。
今振り返ると、あの半年は完全に無駄でした。実際に始めてみると、最初に必要な知識はごくわずかでした。難しいことは、やりながら少しずつ覚えていけばいい。最初から完璧に理解しようとすることが、最大の失敗だったと思っています。
投資初心者の私が最初に知るべきことを3つに絞ってまとめました。とりあえず、この3つを押さえておけば、他のことは全部後回しでも私は動けました。
知ること1:「増やす」より先に「守る」を固める
投資の本を読むと、最初からリターンの話が出てきます。「年利○%で運用すれば○年後にこれだけ増える」という話です。初心者がいきなりここから入ると危険です。
「増やす」より先にやるべきことがあります。
- 生活防衛資金の確保
- 固定費の削減
この順番を守ることが、長期投資を続けるための土台になります。
生活防衛資金:投資の前に必ず用意する現金
前の記事でも触れましたが、生活費の3〜6ヶ月分を現金で持っておくことが投資の大前提です。この金額があれば、暴落が来ても「生活のために今すぐ売る」という最悪の判断を避けられます。
わが家では生活費が月約30万円なので、まず90万円を現金で確保することにしました。最初の暴落で心が折れて売ってしまうリスクを避けるためにも、順番を守ることが遠回りに見えて、実は最短ルートかなと思います。
固定費の削減:一度の手間で毎月の効果が続く
固定費の削減は、投資に回せる余剰資金を作る上で最も効果的な方法です。食費や日用品を削る変動費の節約と違い、固定費は一度見直すだけで毎月効果が続きます。
わが家で実際に削れた固定費をまとめると次のとおりです。
保険の見直し
投資を始める前に必ずやるべきことのひとつだと思いました。多くの保険料を支払っていることに気づいていなかったからです。
私が保険を見直したとき、死亡保障が必要以上に手厚い終身保険に月1万5,000円払っていることに気づきました。会社員であれば遺族年金や団体保険もあるので、個人で高額な死亡保障を持つ必要はほとんどありません。
見直した結果、月7,000円ほど削れました。
保険は「万が一に備えるもの」であって「資産を増やすもの」ではありません。貯蓄型保険や養老保険は、保険と貯蓄を一緒にしているせいで、どちらも中途半端になっているケースが多いです。保険はシンプルに「掛け捨て」にして、浮いたお金を投資に回す方が合理的です。
スマートフォンを格安SIMに変えて月5,000円、使っていないサブスクを解約して月3,000円、保険の見直しで月7,000円。合計で月1万5,000円の余剰が生まれました。年間にすると21万6,000円です。
この金額をすべて投資に回すことにしました。はじめて積立投資の原資としては十分な金額だと思います。「投資に回せるお金がない」という方は、まず固定費の見直しから始めることをおすすめします。
知ること2:複利の本質は「待つこと」
「複利の力」という言葉は、投資の本やサイトで必ずといっていいほど出てきます。「複利は人類最大の発明」という有名な言葉もあります。でも私がそうであったように、多くの初心者が複利の仕組みを頭では理解していても、本質を理解できていない気がします。
複利の仕組みとは、運用で得た利益を再投資することで、利益がさらに利益を生むという効果のことです。
でも私が言いたい「複利の本質」は、仕組みの話ではありません。「売らずに待ち続けることが、複利を活かす唯一の方法だ」ということです。
数字で見る複利の威力
月3万円を年利5%で積み立てた場合のシミュレーションです。
10年と20年を比べてみてください。元本は2倍になっているのに、複利による増加分は約5倍になっています。時間が経てば経つほど、複利の効果が加速していくのがわかります。これを「複利の加速」と言います。
「待つ」ことが最大の投資行動
このシミュレーションが示している本質は、「20年間売らずに持ち続けた人が得た513万円は、難しい投資判断をした結果ではなく、ただ待ち続けた対価だ」ということです。
難しい銘柄分析も、相場のタイミング予測も、頻繁なリバランスも必要ありません。決めたルールで積み立て続け、暴落しても売らずに待ち続ける。これが複利を最大限に活かす、最もシンプルな方法です。
暴落時に「売りたい」と思ったとき
積み立てを続けていると、必ず暴落の場面がやってきます。含み損の数字を見ると、心がざわつきます。「今すぐ売って損切りすべきではないか」という気持ちが出てきます。
でもその瞬間に売ることは、複利の効果をゼロにする最悪の判断です。暴落は一時的なものです。歴史的に見ると、世界経済は暴落のたびに回復し、長期的には右肩上がりで成長してきました。「売りたい」という気持ちが最も強い瞬間が、実は最も売ってはいけない瞬間なのです。
私が暴落時の判断基準として決めているのは「生活防衛資金で生活できるか」だけです。生活に困らないなら売らない。これだけです。複雑な判断をしようとすると感情に引っ張られてしまうので、ルールをシンプルにしておくことが大切です。
知ること3:「完璧な始め方」を待つのが最大の損失である
「もう少し勉強してから始めよう」「もっと相場が落ち着いたら始めよう」——投資を先送りにする理由は、いくらでも作れます。私も半年以上、この先送りを続けました。
今振り返ると、あの半年は非常にコストの高い判断でした。「先送りにすることのコスト」を、多くの人は見落としています。
先送りのコストを数字で見る
月3万円を年利5%で積み立てる場合、1年先送りにすることの影響を計算してみます。
20年間積み立てた場合の最終資産は約1,233万円です。1年先送りにして19年間積み立てた場合は約1,145万円です。その差は約88万円。月3万円を1年先送りにするだけで、88万円の機会損失が生まれます。
さらに怖いのは、この差が複利で広がり続けることです。先送りすればするほど失う機会は大きくなり、挽回することも難しくなっていきます。
「今は相場が高い」は始めない理由にならない
「今は相場が高いから、もう少し下がってから始めよう」という考え方は、一見合理的に見えます。でも実際のところ、相場のタイミングを正確に予測できる人はプロでもほとんどいません。
仮に「高い」と思って待っていたとして、その後さらに相場が上がり続けたら、ずっと待ち続けることになります。逆に下がるのを待って始めたとしても、その後すぐにさらに下がったら「買うタイミングが早かった」と感じて売ってしまうかもしれません。
毎月決まった金額を積み立てるインデックス投資では、タイミングを予測する必要がありません。高いときも安いときも、決まった金額を買い続けることで、購入コストが平均化されていきます。「今が高いか安いか」を考えること自体が無駄なんです。
不完全なまま始めた人が勝つ
これは私が投資を通じて学んだ最も重要なことのひとつです。完璧な状態で始めた人より、不完全なまま始めた人の方が、最終的に良い結果を出せることが多いです。
理由は単純です。「始めた」という事実が、時間という最大の資産を味方につけるからです。完璧な知識を身につけることに費やした時間は、複利が働く時間を削ることになります。
もちろん、最低限の知識は必要です。でもその「最低限」は、思っている以上に少ない。NISAのつみたて枠でオルカンを毎月積み立てる設定をする——これだけを理解していれば、始められます。他の知識は後から身につけていけばいい。
3つを知った上で、最初の一歩をどう踏み出すか
ここまでの3つを踏まえた上で、具体的にどう動くかをまとめます。
まず家計の現状を把握する
投資を始める前に、毎月の収入と支出を把握しておきましょう。投資に回せる余剰資金の目安を知るためです。家計簿アプリを使う必要はありません。大まかな数字でいいです。
確認すべきポイントは3つです。毎月の手取り収入はいくらか、毎月の固定費はいくらか、毎月の変動費はいくらか。この3つがわかれば、投資に回せる余剰資金の目安が見えてきます。
生活防衛資金の目標額を決める
生活費の3〜6ヶ月分を目標額として設定します。会社員であれば3ヶ月分が目安です。この金額がすでに手元にある方は、次のステップに進んでください。まだ手元にない方は、まずこの金額を現金で貯めることを優先します。
積立額を「なくなっても困らない金額」に設定する
最初の積立額は、月3,000円から1万円程度で十分です。「少なすぎても意味がない」と思うかもしれませんが、最初の目的は「投資を習慣にすること」と「暴落を経験して売らないという実績を積むこと」です。金額の大小より、続けることの方がはるかに重要です。
慣れてきたら、半年ごとに積立額を見直しましょう。家計に余裕が出てきたら増やす、少し厳しいと感じたら一時的に減らす。柔軟に調整できることが、長期で続けるコツです。
設定が終わったら、見ない勇気を持つ
積立の設定が終わったら、毎日アプリで相場を確認することは避けましょう。毎日見ていると、一時的な価格の上下に感情が振り回されます。毎日チェックすることが、最も長期投資を妨げる習慣のひとつです。
わが家では、月に一度、積立が正常に処理されているかだけを確認するルールにしました。それ以外は見ない。この「見ない勇気」が、長期投資を続ける上で意外と重要です。
