「銀行に預けていれば安全」——私はずっとそう思っていました。親からもそう教わったし、預けたお金が減ることはないから、安心感があったんです。

「銀行預金=安全」という無知が招いたリスク

私の両親は「お金は銀行に預けるもの」という価値観で育ってきた世代です。バブル崩壊前の日本では、定期預金の金利が5〜6%という時代もありました。その頃なら、銀行に預けているだけで確かに資産は増えていたんです。

問題は、その価値観がそのまま今も引き継がれてしまっていることです。今の普通預金の金利は以前よりも上がったとはいえ0.1〜0.5%程度。定期預金でも大きく変わりません。

私自身、30代まではこの思い込みに気づかずにいました。給料日に口座に入ったお金を、そのまま銀行に置いておく。それが「堅実な生き方」だと思っていたんです。節約して少しでも貯金額を増やして、毎日増えていく金額を確認して満足していました。でも今思えば、現金の価値は少しずつ目減りしていたんですね。

銀行預金が安全に感じるのは、「元本が減らない」という事実があるからです。だけど「元本が保証されている」と「価値が保証されている」は、まったく別の話なんですね。ここを混同したまま何十年も過ごしてきたことが、私の最大の失敗だったと思っています。

お金の額が同じでも、買えるものは減っていく

あるとき、スーパーで食品を買っていてふと気づいたんです。今まであまり気に留めていなかったのですが、商品数は変わらないのに、1度の買い物の合計金額が1万円を超えるようになっていました。今までは今日は買い過ぎて1万円を超えたなという日はありましたが、毎回ではありませんでした。
これが数ヶ月間も続くと、さすがの私もこれは気のせいじゃないと気づきました。物価が上がるということは、同じお金で買えるものが少なくなる、これが物価上昇のリスクなのかと実感しました。お金への不安は漠然とあったものの、急に現実味を帯びた気がしました。

気になり出したら急に不安になり、調べてみました。
日本銀行が目標とするインフレ率は年2%。100万円を銀行に預けたまま20年放置すると、物価上昇分だけで実質的に約67万円分の価値しか残らない計算になります。数字は変わっていないのに、価値は目減りしているんです…。ニュースではよく取り上げられているのは知っていましたが、今まではあまり実感が持てませんでした。

日本のインフレ率推移

日本のインフレ率推移

最高値
+7.81%
1980年
最低値
−1.33%
2009年
2023年(ピーク)
+3.27%
約30年ぶりの高水準
2026年(推計)
+2.24%
IMF予測値
プラス(物価上昇) マイナス(物価下落) 2026年(推計)
主な値:1980年 7.81%、2009年 -1.33%、2023年 3.27%、2026年 2.24%(推計)

出典:IMF World Economic Outlook Databases(2026年4月版)

なぜ損をしていると言えるのか

上記グラフから2022年〜2025年のインフレ率の平均は「2.92%」です。この先も2%が続いた場合、100万円の実質的な価値を計算してみると以下のような変化になりました。

経過年数銀行預金の残高
(金利0.1%)
100万円の実質価値
(インフレ率2%)
実質的な差額
現在1,000,000円1,000,000円
5年後1,005,010円約904,000円マイナス96,000円
10年後1,010,045円約820,000円マイナス190,000円
20年後1,020,201円約673,000円マイナス347,000円
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20年間、何もしなかっただけで、100万円の実質的な価値が約67万円に目減りする計算です。

残高の数字は増えているのに、実際に買えるものは3分の2以下になっているという、なんとも複雑な現実です…。
この事実を知ったとき、正直怖かったです。「守っているつもりが、守れていなかった」という感覚でした。普通預金の金利は現在0.1〜0.5%程度。インフレ率2%には到底追いつきません。「何もしていない」だけで、毎年じわじわと損をしている状態なんです。

ゼロ金利時代に「何もしない」はリスクである

「投資はリスクがある。だから銀行預金の方が安全だ」という考え方には、大きな見落としがありました。
元本は減らないが、物価上昇により実質的な価値が毎年目減りする。20年で約33%の実質損失になる可能性があるという現実を知りました。

だからといって、すぐに投資に踏み出せたわけではありません…。下手に投資に手を出して、残高まで減ってしまったらと思うと、リスクをとってまでスタートする気にはなれませんでした。ましてや仕事と子育てで時間もないので、無理だろうと諦めていました。

「投資はリスクがある」は正しいです。しかし「銀行預金はリスクがない」は正確ではないので、どちらにもリスクは存在しているんです。

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「何もしない」という選択は「リスクゼロ」ではありません。リスクを無条件に引き受ける選択だったんですね。

とにかく何か動き出さねばという思いから、投資系の何本を数冊購入して読んでみました。
そこで書かれていたことは、長期・分散・積立で歴史的にはインフレを上回るリターンが得られてきた事実があるということです。

目の前の現実に目を背けて後悔するよりも、最低限のリスクは取りつつも、目標に向かって行動してみようと決意しました。
私がたどり着いた考え方はシンプルです。
「どちらのリスクをコントロールして付き合うか」を選ぶのが、資産運用の本質だと感じました。投資を「怖いからやらない」という選択も、実はインフレリスクを引き受けるという選択をしているんですね。

全部投資に回すべき?生活防衛資金の考え方

読んだ本にも書かれていたことですが、さすがに投資初心者がいきなり全額投資することはリスクが高いため、やりませんでした。

投資は、短期的に価格が大きく下落することがあるようで、2020年のコロナショックでは、世界の株価が約1〜2ヶ月で30〜40%下落しました。もしその時に生活費も全部投資に突っ込んでいたら、最悪の場合、生活費のために底値で売らざるを得ない状況になってしまいます。

生活防衛資金とは

投資を始める前に必ず確保しておくべきなのが「生活防衛資金」だと書かれていました。これは、万が一のときに投資を売らずに生活できるよう、現金で手元に置いておくお金です。

目安は生活費の3〜6ヶ月分。わが家の場合、会社員で安定収入が毎月あり、生活費がざっくり30万円程度なので、念のため5ヶ月分の150万円は普通預金で置いておくことにしました。この金額が手元にあれば、仮に投資が暴落しても「生活のために売る」という最悪の事態を避けられます。生活防衛資金は「安心して投資を続けるための保険料」だと思っています。

生活防衛資金があれば暴落しても売らずに持ち続けられるメンタルがキープできるような気がしました。この心の余裕がなければ、暴落のたびにパニックになって売ってしまいそうなので、絶対に長期投資を考えているのであれば必要な資金だと思います。

投資で失敗する人の多くは、知識がないからではなく、「売らなければよかった」という場面で売ってしまうからだとも書かれていました。

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生活防衛資金は、投資のミスを防ぐための仕組みでもあるんですね。

余剰資金の切り出し方——わが家が実践したステップ

「生活防衛資金の重要性はわかった。でも、そもそも投資に回せるお金なんてない」——これが多くのパパが抱える現実だと思います。私もそうでした。都内で子育てをしながら、毎月の出費をやりくりするのが精一杯で、「余剰資金」なんてどこにあるんだという感じでした。
そのためわが家では、毎月普通預金で貯蓄している分の約3割を投資に回すことに決めました。

そのほか節約できることがないか家計を見直してみると、意外と「消えていたお金」が見つかりました。わが家が実践した余剰資金の切り出しステップをご紹介します。

ステップ1  固定費を見直す(最優先)

まず手をつけたのは固定費の見直しです。変動費(食費や日用品)を削るよりも、固定費を削る方が一度の手間で毎月の効果が続くからです。

わが家で実際に削れたものをあげると、スマートフォンを格安SIMに変更して月約5,000円、使っていないサブスクを解約して月約3,000円、生命保険を必要最低限に見直して月約7,000円——合計で月約15,000円の余剰が生まれました。

正直、最初は「これくらい削っても大して変わらないだろう」と思っていました。でも年間にすると18万円です。10年で180万円。この金額を複利で運用していたらと思うと、固定費の見直しがいかに重要かがわかります。

ステップ2  投資額は「なくなっても生活できる金額」から始める

最初は月15,000円から始めました。「この金額がゼロになっても生活は変わらない」と思える金額が重要です。少額でも始めることで、投資の感覚を体で覚えていきました。

「15,000円じゃ意味がない」と思うかもしれませんが、意味はありました。投資が怖くて手が出せなかったのに、固定費を節約した余剰資金で運用できたことで、投資への抵抗感を払拭することができました。

ステップ3  慣れてきたら徐々に金額を増やす

半年ほど続けて「暴落しても売りたいという気持ちにならない」と実感できてから、徐々に積立額を増やす予定です。今はNISAのつみたて枠を中心に毎月積み立てています。

余剰資金は「作る」ものです。最初から「余っているお金がない」という状態でも、わが家のように固定費の見直しで月1万円以上の余剰を作れることは珍しくないと思います。まず固定費の見直しから始めることをおすすめします!